【元マッキンゼー直伝】戦略コンサルティングにおける生成AI活用の可能性と人間の役割
生成AIが、特に戦略コンサルティングの領域でどのように活用できるか、そして人間の役割がどう変わるのかというテーマで、記事をお届けします。
村木は、2015年に新卒で日系大企業に入社し、4年間勤務。
その後、トップコンサルティングファームであるマッキンゼーに転職し、6年間コンサルタントとして活躍(マネージャー及び採用面接官を担当)
現在は独立し、コンサルタント転職エージェント会社の社長として、コンサルティング業界への転職支援を行っています。
戦略コンサルティングファームのコンサルタントが生成AIをどう活用し、どこを人間が担い、どこをAIに任せるべきかのポイントを知りたい方にお勧めです。
コンサルティング業界における生成AI活用の現状
戦略コンサルにおける生成AIの活用は広がっており、特にリサーチ系の業務はAIによる代替が進んでいます。 企業固有のデータを使ってプロンプトを通したコミュニケーションで資料作成や、翻訳業務などの業務支援として活用されています。これらを活用することは、コンサルタント自身の能力を高めることにもつながると考えています。
戦略コンサルティングのプロセスは問題解決のプロセスであり、その大部分は生成AIで代替可能だと考えています。一般的に7つのステップで進められますが、各ステップで生成AIがどのように貢献できるか、そしてどこに限界があるのかを見ていきましょう。
1.イシューの特定
生成AIは、一般的な課題の特定には対応できますが、既存のデータが存在しないもの、特に現在進行中(ongoing)の事象に関する深い文脈理解は苦手です。一般論としての課題解決はできますが、コンテクストの読解はコンサルタントが行うべき領域です。ただし、一部では生成AIによるコンテクスト理解も始まっており、対話的にAIに情報をインプットすることで、コンテクスト理解の精度を高めることは可能です。とはいえ、コンテクスト理解には相当量のインプットが必要であり(例えば、Aビジネスの外部環境や協創要因、勝敗要因などはAIでもある程度把握できますが、より詳細な情報をインプットするのは難しい)、ドラフトとしての活用は有効ですが、最終的な精緻化は人間に委ねられているのが現状です。
2.課題の構造化
課題の構造化、すなわちイシューツリーの作成は、生成AIが得意とする分野の一つです。かなりの精度で、Excel形式や画像としてアウトプットを出すことができます。トップファームのコンサルタントが作成したものと比較しても遜色ないレベルのものが生成されることもあり、本質に迫る論点を提示することもあります。抜け漏れをなくすという意味でも有効で、生成AIを使ってファーストドラフトを作成することもよくあります。良いイシューツリーの条件を満たすものを、AIがそれなりの粒度、スピード、品質で作成してくれます。裏側では、マルチエージェントやDeepresearchなども活用しています。
ただし、ここでもコンテクスト理解には課題があり、全ての情報をAIにインプットすることは困難です。「ラストワンマイル」は人間が手掛けた方が精度、スピードの点で優れており、AIと人間が協働することで、時間短縮とクオリティ向上の両立が期待できます。
3.解くべき優先順位付け
AIによる優先順位付けも可能ですが、優先順位付けの観点に関するインプットと、その後のチェックが人間によって必要となるため、大幅な時間短縮にはつながりにくいのが現状です。コンテクストに依存する部分が多いため、人間によるチェックがより重要となります。
4.分析手法の設計
分析の設計を行い、それを実行していくプロセスにおいてAIは有用です。例えば、専門家の知見が必要な際に、エキスパートコールを誰に、どのような条件で依頼するか、その際のメール文面はどうするか、といったタスクはAIによって時間短縮が可能です。海外リサーチも容易になるため、日本語しか扱えないコンサルタントの質向上につながります。言語の壁や国境がなくなることも生成AIのメリットです。
一方で、品質向上の観点では、生成AIが持ち得ない視点、例えば特定の領域における第一人者とのネットワークや、それを通じた専門家へのインタビューについては、人間が持つべき差別化要素となります。グローバルベストプラクティスを人脈を通じて入手できるといった能力は、今後コンサルタントに求められる要素となるでしょう。
5.分析の実施
限定的なインプットであれば、分析の自動化にも価値があります。特に、定性的な分析結果の整理や示唆出しについては、ある程度有効性が見られました。ただし、AIによるハルシネーション(もっともらしい嘘の情報を作り出すこと)のリスクが大きいため、内容は人間が理解した上で実行すべきです。誤った分析はプロジェクト全体を頓挫させる可能性もあるため、定量分析は慎重に行う必要があります。
6.インサイトの導出
分析結果から「So What(だから何なのか)」を導き出すプロセスでは、ブレインストーミングが不可欠であり、その品質向上には生成AIが有効です。考えられる打ち手の検討において、人間だけでは見落としてしまう可能性のある論点をAIが補完してくれることもあります。最低限のチェックとしてもAIは必要です。アウトオブザボックス(既存の枠にとらわれない)な示唆をAIが出してくれることもありますが、そうでないケースも多いため、質の高い示唆を出せるかどうかは、人間のコンサルタントの力量に左右されます。そのため、AIを活用したブレインストーミングを行う場合も、人間側がそこから本質的な価値を見出すことが求められます。
7.ストーリーテリング
資料作成の自動化も可能です。提案資料のようなものであればAIでもある程度対応できますが、コンサルティングレポートのような複雑で深い内容の資料の自動化は、依然としてハードルが高いと言えます(例えば、資料の構成、軸の切り方や表現形式などの詳細な指定は難しい)。この点については、業界の専門家とも話をしましたが、 現状ではPowerPointのショートカットなどを駆使して人間が作成した方が、結果的に早く、質の高いものができるというのが共通の見解です。
生成AI時代のコンサルタントの役割
これらのステップを通じて見えてくるのは、生成AIは強力なツールであるものの、万能ではないということです。これに加えて「アップサイド」を生み出せる戦略コンサルタントが今後生き残っていくと考えます。
単なるコンテンツレベルのPSだけでなく、人に対するPS(例えば、上司の説得やメンバーの動機付けなど)も必要であり、これは現状、人間のコンサルタントが担うべき領域です。「ラストワンマイル」や、真に「アウトオブザボックス」な発想、そして何よりも深い「コンテクスト理解」は、依然として人間の重要な役割です。
AIが出してきたものを鵜呑みにせず、批判的に検討し、より高い付加価値を生み出す「アップサイド」を創出することが、これからのコンサルタントには求められます。
論理を追求するコンテンツレベルの課題解決はAIも支援できますが、それがコンサルタントの総合力の全てではありません。前述の問題解決のプロセスの7つのステップの他にも、コンサルタントの力が試される場面は多くあります。例えば組織内のコミュニケーションや政治的な駆け引きなどです。こういった、コンテクストが非常に複雑に絡み合う領域は、AIにとって極めて難しい課題です。
生成AIと人間の役割分担の未来
戦略コンサルタントに最適化された生成AIは、戦略コンサルティング業界全体のレベルアップに貢献する存在になるでしょう。AIとの協働を通じて競争を活性化させ、日本の戦略コンサルタントがより高い価値を提供できるようになること、そして最終的には顧客が得られる便益を最大化することが可能になるはずです。
そのためには、コンサルタント自身が、AIでは代替できない人間ならではの価値、すなわち深い洞察力、創造性、そして人間関係構築能力を磨き続けることが不可欠です。
生成AIの開発が進むにつれて、人間には人間ならではの強みがあるはずです。その強みとは何かを常に問い続け、磨き続けるという、人間と生成AIの協働の姿勢が不可欠と言えるでしょう。生成AIは、人間がより深く学び、成長するための環境を整える触媒となり、それこそがその存在意義なのかもしれません。
さいごに
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