「1ヶ月で200件インタビュー」元BCGが語る、トップファームの泥臭すぎるリアルと1日のスケジュール
元BCGが語る、トップファームの泥臭すぎるリアルと1日のスケジュール
外資系戦略コンサルティングファーム、とりわけ「MBB」の一角を担うボストン・コンサルティング・グループ(BCG)その若手コンサルタントは、日々どのようなスケジュールで、どのような仕事をしているのでしょうか。
「毎日タクシー帰り?」「会議では発言しないと価値がない?」世間に溢れるコンサルのイメージと、実際の現場のリアルは少し異なります。
今回は、ステラキャリアズのエージェントでもある元BCGの春奈氏に、自身が「トップクラスに泥臭かったけど1番好きだった」と語るプロジェクトを例に、中間報告前後の超リアルな「1日の流れ」を徹底解説してもらいました。
■ 1ヶ月で200件のインタビュー。超泥臭いプロジェクトの裏側
Q:今回は元BCGの春奈さんに、BCG時代の1日の流れについてお話を聞いていきたいと思います。よろしくお願いいたします!
春奈さん:お願いします。まず前提ですね。守秘義務の関係でかなりぼかしながらなんですけど、どんなプロジェクトだったかと言うと、BCGで経験した中でトップクラスに泥臭かったけど、1番好きだったプロジェクトですね。
僕の年次が新卒2年目で、BCG入社1年目の時なんで、チームの中の下っ端で入ってるという感じです。
プロジェクトの内容としては、大手企業のとある部門の戦略再構築。超ぼかしながらなんですけど、もうちょっと言うと、全国様々な業種の中小事業者にサービス提供してたんですね。
シェア1位で何年もやってる事業だったんですけど、実は全国のマーケットを定量的に把握しきれてない。どこの地域にどれぐらいの市場規模があってとか、どこの地域のどういう業種の中小事業者にどういうニーズがあってとか、KBF(Key Buying Factor)は何かとか、そういうのを全部定量的にExcelで可視化したいっていうプロジェクトですね。
これは何やるかと言うと、1ヶ月で200件インタビューをします。だからもう北海道から東北からって順番に、各地方の例えばラーメン屋、介護事業者、保育事業者っていうのをピックアップしてって、ひたすらインタビューしてひたすらExcel・パワポにまとめてくという。
これがうまくいったら、後続の戦略策定フェーズの仕事ももらえるっていう感じですね。なので超泥臭いプロジェクトです。
どの1日をピックアップするかというと、「中間報告の日」をピックアップしました。結構思い出深い日だったので。
Q:1ヶ月で200件インタビューしたんですよね。それは春奈さん1人でやったってことですか?
春奈さん:1人じゃなくて、チーム体制がプロジェクトリーダー(PL)と、その下にコンサルタント2人と、あとアソシエイトの僕という感じです。
Q:春奈さんは何件やったんですか? 1ヶ月で。
春奈さん:僕が多分70件とかぐらいすかね。残りの130件は僕以外のPL以下さんに分担して。
Q:70件の大変さ。ちょっとあんま想像つかないですね。
1ヶ月何時間普通の人って働きましたっけ? 160時間じゃないですか。インタビュー1時間だとして、前後で時間がかかるわけですよね。インタビューの準備して、インタビュー終わったらその結果をまとめて示唆出してとか。仮に1件あたり3時間だとすると、3×70=210時間だから、もうこれだけで普通の人の1ヶ月分の業務はるかに超えていて。多分それ以外にもありますもんね、インターナルでミーティングしたり。
春奈さん:そう。結構セットするのも大変で。
Q:確かに200件ピックアップして、ビザスクとかミーミルとかいろんなの使ってセットするっていうのがまず大変ですね。エキスパートソーシングするのって割と大変ですよね。
春奈さん:面倒ですね。結構。
Q:体調崩したりしたら終わりですね。
春奈さん:終わります。全部予定が崩れて。だから基本風邪引いても、コンサルタントというのは休まない生き物ですね。
■ 午前中のスケジュール:自宅作業とミニCTM
春奈さん:睡眠時間は取れてて、2時に寝て8時に起きたぐらいですね。
睡眠時間6時間。中間報告前日って、ある程度出来上がってはいるじゃないですか、資料とか。だから、そんなに徹夜とかっていうことは、ありえますけどね、中間報告前日で徹夜も。この日は別に普通でした。
午前中はずっと自宅で。8時に起きて、1時間作業してますね。前日のインタビュー結果をまとめる前に前日寝落ちしたので、朝一でまとめて。
9時からPL以下のチームミーティングがあって、そこが前日のインタビュー結果の共有したり、あとそれを叩いてもらったり、今日の動き方の確認という感じですね。
BCGではこれ確か「ミニCTM」って呼んでました。チームミーティングの略で、パートナーが入ったらCTMで。
それを終えて9時半で。9時半から12時までインタビュー2本ぐらいやってますね。2本やりながら、並行して内容Excelにまとめてくって感じですね。
あと念のためお伝えしておくと、この情報をただインタビューで聞いてExcelに文字起こしするのって、BCGの単価正当化されないんですよ。
だから、並行して価値を出さないといけなくて、戦略仮説を立てていくんですけど。
例えばどういうのかと言うと、全国いろんな地域の保育の事業者にインタビューしてると、基本的には超大手のプラットフォーマーのサービスを使っているところが大半が……ぼかしながらで何のサービスとか言えないんですけど。なんですけど、ポツポツと「エアポケット」みたいに大手サービス使ってない地域が散見される。
「これなんでだろう」という風に聞いてったら、地場の代理店のサービス使ってるんですよね。実はそこの関係性が結構ズブズブだから使ってるのかと思いきゃそうではなくて、「価格がもっと安かったらスイッチしますよ」とか、要はその大手のプラットフォーマーが営業漏れてるんですよね、この地域で。
そういう地域が、実は例えば東北でそのインタビューが聞けたとして、九州にも実はあるんじゃないかとか。あと、保育の事業者でそういう事象が見られたけど、介護の事業者でも同じようなことが起きてるんじゃないか、っていう仮説が立っていって。
「じゃあそこにまとまって営業かけたらシェアを全部剥がせる可能性があるんじゃないか」とか、こう示唆を出しながらこのExcelのメモをまとめていくっていう感じですね。
なので結構やることはたくさんあるって感じです。そうこうしてるうちに午前中終了ですね。
■ 午後のスケジュール:自腹グリーン車通勤と昼食事情
春奈さん:この日は午後がオンサイトでクライアントミーティングっていうか中間報告があったんで、お昼ぐらいから支度し始めて、東京駅に向かいました。1時間ぐらいかけて。
Q:タクシーっていいって言われるじゃないですか。タクシー使うんだったら暗黙の了解で「車内は仕事しろ」っていうのはありません?
春奈さん:ありますね。
Q:そうですよね。ただタクシー乗るんだったら「お前何してんだ」ってなります。
春奈さん:僕、車酔いがすごい激しくて、タクシーで作業できないんですよ。なのでちょっと自粛して電車なんですけど。
当時新卒2年目で、1社目のベンチャーから転職して年収2倍弱になってるんですよね。当時の経済感覚としてすごい覚えてるのが、タクシーはまだ全然高いんすよ、自分にとって。
でも「グリーン車がすごい安いな」っていう。安いていうかコスパがいいなって思って、確か当時グリーン車を使い始めたって感じですね。ただ自腹です。経費申請めんどくさくて。
Q:あれですよね。東海道線・在来線のグリーン車。750円とかで。
春奈さん:あ、そうです。そうです。僕横浜に住んでたんで、横浜から東京駅まで1000円弱ぐらい課金してって感じですね。
東京駅到着して、この日とか普通に昼飯食べてますね、八重洲の地下街とかで。
でも「コンサルタントも1分刻みで忙しい」みたいのが結構YouTubeの社員1日公開とかで上がってますけど、そういう日は僕的にはだいぶレア。全然昼飯食べる余裕とかある日の方が多かったなって感じです。
Q:でもそこで行くと、やっぱり「ご飯食べる速度が遅い」っていうフィードバックをもらう新人コンサルタントが多いっていうのはマッキンゼー割とありましたね。早く食って帰ってこいってことですか? もう5分とか10分で食べろとか。
あとエレベーターの「開く」ボタンとか無駄に業務時間内に押してる人とかは、イラっとしたことあります。
春奈さん:へえ。業務時間内に開くボタンを押してるってどういうことですか?
Q:あ、こんないろんな会社の人が乗ってるじゃないですか。別の会社の、クライアントでも上司でもない人のために、エレベーターの開くボタンを押したら、はい、この10秒無駄じゃないですか? チャージされてんのに。
春奈さん:ちょっと似た話で思い出したのがあって。
1社目がそのベンチャーだったんですけど、上司がベイン出身の人がついてて。一緒にエレベーター乗った時に、社長がちょっと半歩遅れて入ってきたっていうか。
その時にそのベインの人がエレベーターのボタンの前にいたんですけど、本当は僕がいないといけないんですけどね。
その方がいて、パッと自分のフロアを押しかけた手を止めて、自分のフロア押さずに社長のフロアを押して。
だから、その社長が10階とかで1回止まった時の5秒ぐらいのタイムロスを気にして。あえてそこ自分は降りずに1回社長のフロアまで上がって、自分のフロアに戻るっていう。それ僕見た時に「さすがだな」って。
Q:「プラダを着た悪魔」の冒頭1分ぐらいでそういうシーンありますよね。そういう大事な、単価の高い人の時間を優先しようっていう、近いものがある気がしますね。
春奈さん:単純に時間をお金に換算したらいくらだからとかってよりも、ホスピタリティというかそういうとこかなって気がしますけど。
あと結構、同期とも一緒にランチ行ったりとかしてたんで、みんな激しくはなかったはずですね。
ただやっぱ当時そのスタッフレイヤーがすごいホワイトの方に寄せられてたっていうか、労働時間超過しないように守られてたっていうのはあるんで、PL以上が割食ってたっていうのはよく言いますけど。当時のスタッフレイヤーはそんなに長時間労働とかはないって感じですね。
Q:普通にフェアに行っとくと、やっぱり成果主義だから、しっかり納品物がデリバーできて期待値超えてたら、別にお昼ご飯食べてもいいし、逆に別に6時間寝ててもいいし、日中っていうのはありますよね。
春奈さん:そうですね。成果物ができてるか次第ですね。八重洲の地下街でランチ食べて、そっからクライアントオフィスに向かいます。東京駅周辺の一等地ビルですね。
結構当時僕感動しましたけどね。新卒2年目とかで自分がスーツ着て、この丸の内とかのビルに一丁前に訪問してるなっていう。
1社目ベンチャーだったんで私服で渋谷でしたし。コンサルティングファームで働いてるなって思いましたね、当時。
■ 中間報告:「杉田さん(元日本代表)が面白がる話」とカリスマ事業部長
春奈さん:14時過ぎぐらいにクライアントのオフィスのロビーでチームで待ち合わせですね。
コンサルタント2人とプロジェクトリーダー1人と、あと僕って感じで。当時はコロナ禍だったんで、僕からしたらみんな初対面って感じです。あんまりオフィスで一緒にプロジェクトルームに入って仕事するみたいなこともない時期だったんで。
みんなで集まり次第クライアントの会議室に上がって、中間報告ですね。
ドラマで見てたようなこの字型ならぬロの字型で座席が並べられてて。
僕らって正面がクライアントの事業管掌役員と事業本部長と、あと事業部のナンバー2という感じで。その会社は、この両サイドに若手の有望株なっていう方たちが数人並んでるんですよね。結構この会社のカルチャーだと思うんですけど、そういう若手をそういう場に出席させるっていう。
当時は僕入社1年目で1番下っ端なんで、仕事はひたすら議事録取るっていう。ほぼタイピングスピード勝負なんすよね。今はAI議事録とかありますけど。なので発言は一言もしてないです。
会議で発言しないとバリューないから出てけみたいな考え方もありますけど、逆のリスクもあるじゃないですか。
変なことを下っ端が喋ってBCGのレピュテーションを下げるっていうリスクもあって。
結構BCGは「パートナーによるパートナーのためのファーム」って言われてて。プロジェクトリーダーですらクライアントミーティングであんま喋んないなって結構びっくりした記憶があって。基本もうずっとパートナーが喋ってますね。
Q:でもそれってパートナー同席のミーティングはって感じじゃないですか?
春奈さん:そうですね。相手のお客さんのレイヤー次第っていう感じではあります。
部屋入った時から思ってたのが、クライアントの事業部長がどう見てもお若くて、20代後半って言われても納得するぐらいの感じなんですよ。超大企業ですよ。
「何者なんだろうな」って思ってたんですが。この方が今までで1番衝撃的だったクライアントで。会議始まる前に、BCGのパートナーとその人が「あれ、今日杉田さんいないの?」ってタメ口で喋ってるんですよ。杉田さんて誰かというと、BCGの元日本代表なんですよ。
その人「うわあ、残念だな。絶対杉田さん聞いたら面白がる話あんだけどな」って言ってて。その方が少年漫画の無邪気系キャラみたいな感じなんすよね。何者だろうと思って会議聞いてたんですけど。
BCG側からExcelにまとめてた市場調査結果プレゼンしてく。さっきのエアポケットの話あったじゃないですか。その辺で事業部長、その若い方がパンって手叩いて、「いやあ、面白い!」って言い始めて。部下に「まるまるさん、九州の営業チームにその事実確認してすぐ動かせて」と。
「じゃあBCGさん、そのエアポケット全部狙うための必要予算とインパクト試算して」。「で、その(隣にいる)管掌役員に『何々さん、こんな感じで動いていいすよね』」って。これなかなかないですよね。
Q:普通はもっと上の人がその役割をやるってことですか?その場でそんなにアクションが決まるってことないです。
春奈さん:全ての決定権をその人がほぼ持ってたみたいな。持ってるし、それを良しとされるカルチャーが多分その会社にはある。
Q:すごい。大手で若い人が最前線にいるなって。
春奈さん:多分もうとんでもなく優秀でカリスマ性ある人なんですけど、だからこそ若いながら大抜擢されてっていう。
その会社のこと色々聞いてましたけど、どういうカルチャーとか、その事前情報とその目の前の事象がパチンと繋がったみたいな。「こういうことか」ってなって。
結構コンサルティングワークの中の「1%の楽しい」って思う瞬間がそういう時。99%ひたすらインタビューしてるとか全然面白くないですよ。でもその1%のためにやってるなみたいな、すごく面白い瞬間があったりとかする。
■ 退勤とその後:BCG専用ディーン&デルーカと合コン事情
春奈さん:そんな感じで中間報告終了ですね。17時ぐらいになってて。すごい覚えてるのが、PL以下のメンバーで八重洲の地下街行って、2杯だけビール飲んだんですよね。「一旦お疲れ」って言って、「2杯ぐらいなら許されるでしょう」って言って、みんなで2杯だけ飲んで。
その後またみんなでタクシー乗って、BCGの日本橋室町のオフィス戻って、ラップアップのミーティングして。そのクライアントのお若い事業部長からさっき指示されたじゃないですか。「こういう試算モデル作って」っていう。その試算モデルの素案をみんなでExcelで作り始めて、ある程度形になった段階で一旦この会議室から解散、各自作業って感じですね。
その時点で19時ぐらいになってて。僕は「ディーン&デルーカ BCG店」に移動します。
Q:BCG店があるんですか?
春奈さん:BCGのオフィスの中にディーン&デルーカあって。社員が毎月8000円ぐらいだと思うんですけど、ポイントでもらえるんですよ。
あんま使わなかったんです、ポイント残っちゃいましたんで、基本もうほぼ使い放題に近い感じで。そこで作業してましたね。
その日が金曜日だったんで、中間報告も無事終わったってことで、割と早上がり20時ぐらいにオフィス出て、新橋で飲んでた友達と合流して、1日終了って感じでした。
Q:ちなみにやっぱ合コンではモテるんですか? BCGは。
春奈さん:合コンではBCGは知名度低いですよ。
Q:確かに低いかも。ビッグ4とかアクセンチュアは知ってるんですけど、BCGは知らない人が多いっすね。
春奈さん:コンサル業界にいなければ分からないかもですね。
でもデロイトとかの女性のコンサルタントからすごい、なんて言うんだろう、必要以上に高く評価される感はありますね。勝手に神みたいに崇められるんですけど、別にそんな大した差ない気もするけどなって思いながら、同業からの評価超高いですね。
あと商社の総合職の女子とか、結構自分もハイキャリアみたいな女子からは、合コンとかではすごい評価されるっていうか「すげえ」って言われる感じですかね。
Q:ちょっと失礼かもなんですけど、AGCなら知ってるけど、確かにBCGって言ったらピンとこないかもしれないですね。ツベルクリンとか言われたりする。
春奈さん:BCGってググったら「ツベルクリン」の方が先に出ますよ。
Q:確かに。確かマッキンゼーは結構知られてるんですよね。やっぱナンバーワンとナンバー2は全然知名度に差が出て、エベレストとK2みたいな。
春奈さん:そうなんですかね。私はでもどっちも知らなかったです。2年ぐらい前まで。
まとめ
元BCGコンサルタントの1日からは、「泥臭さ」と「知的興奮」が同居するコンサル業界のリアルが浮かび上がってきました。
1ヶ月で200件という膨大なインタビューをこなしながら、単なる文字起こしで終わらせず、「エアポケット(営業の抜け漏れ)」を見つけ出し、事業インパクトのある仮説を立てる。その地道な99%の努力があるからこそ、クライアントのトップがその場で意思決定を下す「1%の最高に面白い瞬間」に立ち会えるのです。
タクシー代をケチってグリーン車に乗り、合コンでは「ツベルクリン?」と勘違いされる。世間の華やかなイメージとは少し違うかもしれませんが、ビジネスの最前線でダイナミックに世界が動く瞬間を味わえるのは、トップファームならではの魅力と言えるでしょう。
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