【IBM→デロイト→マッキンゼー】「これまで学んできたことを全て捨てろ」異例のキャリアを歩んだ元APが語る、ファームごとの“流儀”の違い
「今の瞬間から、君はこれまで学んできたことを全て捨てなければいけない」
今回インタビューしたのは、IBM、デロイト トーマツ コンサルティングを経て、マッキンゼー・アンド・カンパニーのデジタル部門およびAI専門チーム「QuantumBlack」で準パートナー(AP)を務めた福元さんです。
輝かしい経歴の裏には、入社直後にこれまでの成功体験を真っ向から否定され、年下の若手に頭を下げてゼロから学び直すという、壮絶な「アンラーン(学習棄却)」の苦悩がありました。
コンサル業界内での転職でも「全てが違った」と語る福元さんに、デロイトとマッキンゼーの決定的なカルチャーの違い、マネージャーと準パートナーの役割の壁、そして今、生成AI領域で起業を果たした理由まで、そのキャリアの全貌を余すところなく伺いました。
■ IBMで「もういらない」と言われてからの逆転劇
Q:まずは簡単に自己紹介をお願いします。
福元さん:福元と申します。2025年の4月(※注釈:退職時期)までマッキンゼーの日本支社で、マッキンゼー・デジタルというデジタルの部門と、QuantumBlackというAIを専門にするチームで準パートナーをしていました。
その後、少し上場企業の執行役員をさせていただきまして、その後、AIのプロダクト開発を専門にする「ステラアイズ」という会社を創業しました。よろしくお願いします。
Q:IBM、デロイト、マッキンゼーと素晴らしいキャリアを歩まれていますが、割とすんなり転職されたのでしょうか? 実際はどうでしたか?
福元さん:そうですね、正直最初、IBMからデロイトの時は引っ張ってもらったっていうのが正しくて。IBM時代に一緒に仕事をしていたパートナーの人がデロイトに移って、しばらくした後に「福元君、デロイトってところで多分福元君がやりたいことできるから移ってこないか」という風に声をかけてもらったというのが、最初の転職でした。
ただ、じゃあ「なんかフラフラしてたら呼んでもらえたか」って言うと、そうでもないかなって思っていまして。
僕はIBMで最初、そんなに自分のやりたい仕事をやらせてもらえなかったんですよね。やらせてもらえなくて、でも「ここで腐ったらもうつまんないな」って思って、最初の仕事もうめちゃくちゃ全力でやりましたと。
で、当時の上司のマネージャーとかには、いやもう福元君もういらないけどみたいなことを言われて、ロールオフ(プロジェクトから外れること)するとか言われたんですけど、「嫌です。僕はここで何かを残したいんです」と言って仕事をしてたら、その仕事っぷりをある種評価してもらって、「あいつだったら連れてきてもデロイトでも活躍してくれるだろう」みたいに思ってくれたのかなって思いますかね。
Q:IBMには何年いらっしゃったんですか?
福元さん:4年、5年間いました。何周かちゃんと(プロジェクトを)回して経験できるので、そうするとちょっと上の仕事とか任せてもらえるようになるので、そういう意味だと「何周かちゃんと回して、ちょっと上の仕事をやる」というところがすごい大事だなと思います。
■ エージェントなし、独学で挑んだ「地獄のマッキンゼー面接」
Q:その後、デロイトからマッキンゼーへの転職はいかがでしたか?
福元さん:デロイトからマッキンゼーは、正直めちゃくちゃ苦労したと思っていて。実は転職エージェントを経由せずに、公式ホームページから応募したんですけど、今思ったらちょっと大変だった。なぜなら、面接対策とか一切わからないので(笑)。
それこそ戦略コンサルティングファームのケース面接対策みたいな本を買ってきて、何周もボロボロになるぐらいまで自分で対策しました。マッキンゼーってホームページにケースシナリオ載ってるじゃないですか。英語なんで、そんな英語得意じゃないんで、一生懸命辞書引きながら「そもそもこれ何聞かれてんだろう」とか、一生懸命対策してました。
Q:具体的に「これめっちゃ大変だったな」ということはありますか?
福元さん:何聞かれるのか想像が全くつかなかったので、正直マッキンゼーに行きたいというのは大本命であって、他のファームもすごい受けたんですよね。
で、ケース面接とかすごいしてもらって、自分も最初全然うまく受け答えできない。「何がダメだったんだろう」「何を回答すると面接官の人って自分を評価してくれたんだ」ていうのは、すごい何回も何回もトライ&エラーを繰り返したっていう感じでしたね。
あと、マッキンゼーの面接ってすごい(回数が)少ない人もいると思うんですけど、僕すごい多かったんですよ、数が。僕、6回やったんです。
しかも何日にも分けてたんですよ。1回あたり多分マックスで2回の面接の方と面接をしたので、多分3回ぐらいオフィスで面接をしたんですよね。でも1回終わった後、1週間とか2週間とか空いてたんで、多分トータルで1ヶ月半ぐらい「ずっとマッキンゼーの面接受けてます」みたいな期間があって。
それで、なんかこう面接官の顔見ながら、「こういう受け答えしたらすごいニコニコしてたな」「こう受け答えしてるとすごい渋い顔してたな」っていうのを、もう終わった直後から全部頭の中であの受け答えの何がダメだったんだろうみたいに振り返っては、またケース対策本をもう擦り切れるまで、手垢まみれになってるやつをもう1回見て、「あの時はこういう風に答えるべきだったんじゃないか」とかっていうのをすごい対策しましたね。その時は必死だった。それだけでしたね。
■ 面接で最も響いたのは「目の前の仕事への泥臭い執念」
Q:転職活動の中で、特に「これやってよかったな」と思うことはありますか?
福元さん:転職活動そのものじゃないんですけど、結局転職活動の中でケース面接だけじゃなくて、あなた、今の職場でどんなインパクトを残したんですか、どんなリーダーシップを発揮したんですかっていうのをすごい聞かれるんですよね。
で、その時に、デロイトで「転職ありき」で仕事してると、正直そんな仕事に真剣に向き合ってないと思うんですよ。
僕はデロイト辞める気なんか全くなかったので、結構全力で「どうにかしてそのお客さん(クライアント)に対していいものを届けたいな」とか、「どうにかしてデロイトの今いるチームをもっとより良く、楽しく働けるようにしたいな」とか。
あと、デロイトのマネージャーって売上責任が僕の時あったんで、「もっと売上を上げて、自分が会社に貢献するために何ができるんだろう」っていうのを、もう全力でやってたんですよね。
全力でやっていると、おのずとやってる仕事のレベルが、2個とか3つぐらい上の仕事を任せてもらえたりとかっていう瞬間があると思うんですよ。
例えばデロイトだと、僕、日本のトラックメーカー(商用車メーカー)を担当してたんですけど、すごい必死に食らいつきながらお客さんにインパクトってやってると、お客さんからもすごい選んでもらえる。
そうすると、そのトラックメーカーっていろんな国に当然支店があるんですよね。で、デロイトっていろんな国に展開してるんで、その国で仕事をしてるデロイトのメンバーとかと話す機会があるんですよ。で、話してると日本の本社で一番活躍してるのは福元らしいです、一旦福元に聞けば、日本の本社のことは全て分かるんじゃないかみたいな感じになってきて。
なんかもう、アジアパシフィック全域のこのお客さんをデロイトで見てるってなると「福元である」みたいな感じにだんだんなってきて。上のパートナーからも「いや、福元君、アジアパシフィック統括ってことでいいじゃん」みたいな感じで。もちろんただの肩書きでしかないんですけど、そういうことをちょっとだけやらせてもらった瞬間がある。
そういうことをやっぱり面接とかで、「必死に食らいついてるとなんかちょっとアジア統括みたいに見てもらえてて…」みたいなことを言うと、すごいじゃん、すごいリーダーシップだねみたいに言ってもらえたりとかして。
結局なんか、そこが一番転職活動で効いたなという風には思います。
■ デロイト入社時の洗礼「パワポは綺麗だけど、中身ないね」
Q:新しい環境に入って、どういう風に立ち上がっていかれたんですか? オンボーディングは大変でしたか?
福元さん:いや、これは正直めちゃくちゃ大変でした。
IBMはシステム開発をしてるんですけど、デロイトになってくるとそれだけじゃない仕事っていうのもやらなければいけないんですよね。そうなってくると、元々IBMで習った「こういう働き方をしなさい」っていうのをそのまま一旦持ち込んだんですよね。けど、やっぱカルチャーが全然違うのでそのまま行くとですね……もう今でも忘れもしないんですけど。
パートナー(今はもう大師匠と思ってるんですけど)から、福元君ってさ、なんかパワーポイントすごい綺麗だよね。中身ないけどって言われたんですよね。別にIBMの仕事が質が低いとかでは全くなくて、違う仕事をしてるのに前の仕事のやり方を引きずっちゃったっていうところもあってやってたんですよ。
パートナーも本当に頭悪いと思ってたんじゃなくて、「福元は前の仕事のやり方を引きずりすぎてる」と。ちょっと優しく言ってたんだけど、「多分聞いてねえな」と思ったんだと思うんですよね。ちょっとショック療法じゃないですけど、もう一発行ってみるかみたいに言ってもらえた気がするんですよ。
で、そこで、こっちもカチンと来るじゃないですか。「もう見返してやろう」みたいな気持ちになって。
じゃあどうしたらいいんだと。これ多分僕の癖だと思うんですけど、まず本屋に駆け込んで、コンサルの本を大量に買ってきたんですよね。
ベインの人が書いてる「フレームワークはこうだ」みたいな分厚いやつ買ってきて、「もっとこういうフレームワークがいいんじゃないですか」とか「本読んだらこういうことですよね、結局」みたいなことを言って。そしたら「違うね」「浅いね」みたいなこと言われて。っていうのを、ひたすら結局半年間ぐらい繰り返して。もう悔しいんで、「もうなんかフィードバックもらったら、だったらこうなんじゃないか」って自分でこう資料作っては「見てくださいよ」って言って、全然違うと言われて。で、「もう俺が作るからいいよ」って言われてパートナーが作った資料とかがバンと送られてきて。
もうクライアントとかも「さすがですね」みたいに言うんですよね。僕が作った資料と何が違うのか、当時の僕には全くわかんないんで、2つのパワーポイント並べて、もう文言を一字一句比べたりとかして。
「なんで僕の言葉だとダメで、パートナーが作る言葉だといいんだ」「僕が『改善しましょう』とかって書いて、パートナーが『改革しましょう』って……こんな言葉遊びやんけ!」とか思いながらも、あ、でもじゃあ今度から改革って書いてみようかなとか。
ひたすらもうパワーポイントを2つ並べて比べてはパクる、真似する。背中を見てじゃないですけど、とにかく真似していくっていうのを半年やった時に、そのパートナーから「良くなってきたね」って言ってもらえて。
「これでいいんだ」と思って、それからそのやり方を忘れないようにずっとひたすらトレースし続けるってことをやったら、すごくお客さんからも認めてもらえるということがありましたね。
■ マッキンゼー入社初日「33歳、全てを捨てて22歳に教えを乞う」
Q:その後のマッキンゼーへの転職時はいかがでしたか?
福元さん:次にマッキンゼーに移った時もめちゃくちゃ大変で。これまた別に、デロイトのコンサルティング(の質)が低いとかじゃないんですよ。もうカルチャーが違うんで、全然やること違うんで大変でした。
ただここもすごいありがたかったかなって思ってるのが、当時のデジタル部門のトップのパートナーが入社初日に「福元君、1on1しようよ」って言われて。
「なんだろう」と。マッキンゼーのパートナーに呼び出された、めっちゃ緊張するなと。すごい綺麗なガラス張りのパートナールームに入って、挨拶したらそのパートナーが、
「残念ながら今の瞬間から、君はこれまで学んできたことを全て捨てなければいけない」
と言われたんですよね。アンラーン(学習棄却)ですね。
結構当時33歳でアソシエイトで入社して、同月入社の人とかみんな20代だったんですよね。33歳ってすごい年長の部類に入ってて、僕からしたら僕の方が社会人歴も長いし、コンサルティングっていう意味だとマネージャーまでやってたし、「どっちかっていうとスタート地点が違うよ」みたいに思ってたとかあったんですけど。
パートナーに「全て忘れてください、ここはマッキンゼーなんです」と。「デロイトですごく活躍して入ってきてるのはもう知ってますと。でもやり方が全然違いますと。全て忘れなさい」と言われて。
まず最初にすることは何か分かるか。プロジェクトに君はまず配属されますと。そこには新卒で入ったBA(ビジネスアナリスト)の子たちが必ずいますと。彼らに『教えてください』って言いに行きなさい。
と言われたんですよね。
「なぜなら、彼らは東大だのハーバードだのっていうのを卒業した、しかも各大学でも自分でなんか団体を立ち上げて100人規模にしましたとか、学生の頃から起業してもうどっかに売却しちゃいましたみたいな、頭いいだけじゃなくてバイタリティもある。そういう人たちが真っ新な柔らかい脳みそでマッキンゼーの働き方を学んでるんです。福元君よりも確実に彼らの方がマッキンゼーで仕事ができます」と。
「何歳?」って言われて「33です」と答えたら、22歳の子たちに頭を下げて『教えてください』って言いに行くんだよって言われて。「なるほど、分かりました」って、本当にやったんですよ。
マッキンゼー入ってきて全然不慣れで、パワーポイントの作り方とか多分デロイトの癖とか出ちゃうんで、「教えてもらってもいいですか? 1回作ってみるんでダメなとこ全部言ってください」みたいに言ったら、「全然いいですよ! 福元さん、この書き方ダメっすね」「その矢印なんすか? 意味わかんないっす」「なんでここになんか国の旗つけちゃってるんですか?」って。
「いや、なんかちょっと(旗を)つけた方がいいかなと…」「いらないっす!」「すぐ直します!」って。もうひたすら真っさらな気持ちで食らいついたっていうのはあります。
■ デロイトの「個の力」vs マッキンゼーの「グローバルの知」
Q:IBMとデロイトが違うのはわかるんですが、デロイトとマッキンゼーって具体的に何が違うんですか?
福元さん:コンサルティングやってるっていう意味だと、基本的には同じなんですよね。お客さんの課題って何だろう、課題をどうやって解くんだろうっていうのをロジックで分解して、1個1個解決策を出していくっていう形なんですよね。
ただ大きく違うのは、マッキンゼーってグローバルのベストプラクティスをちゃんとクライアントに持ち込むべきという強い信念があるじゃないですか。てなると、「福元君が考えたその解決策」とか「お客さんの課題ってこうだよね」みたいなのって、そんなに興味ないんですよ、クライアントって。
「ええ、じゃあどうしたらいいんですか」みたいな時に、「いやいやいや、アメリカにいるパートナーに聞けばいいじゃん。こんなの絶対向こうでやってんだから」と。「パートナー、会ったことないでしょ?」「いやいや、普通にメールしたらいいじゃん」って。英語でメールするんですかみたいな。でもそんなことは言えないんで、「分かりました」ってもうすぐにメールして。そしたら結構すぐに「ヘルプよ」って返ってくるんで、すぐにインタビューさせてくれてやるんですよね。
そういう意味で、もう本当に世界中のナレッジを使い倒してますかみたいなところはやっぱ違ったんですけど。デロイト時代、そういう経験が僕自身はなかったので(もちろんデロイトの中でそうやってる人いると思うんですけど)、全然違うなっていうのが1つ。
あとは、マッキンゼーってすごい「マッキンゼーの型」を大事にする。今でも忘れないんですけど、パワポを僕が作って「テキストボックスの罫線のスペースがマッキンゼーのテンプレートと違う」みたいなことを言われて。「いや、ちょっと自分でオブジェクト操作して作りました」って言ったら、お前バカなの?みたいな感じで言われて。「福元流ってことで、それでクライアントにベストプラクティス届けられると思ってんの、その考え方で」って言われて。「いや、なんかはい、すいません…」って。「え、でも、そんなんどっちだっていいだろう」って心の中で思いながらも、「違う違う違う」って思ったんですよね(笑)。
どっちかっていうとデロイトは「もっと個人として強くなれるか」っていうのを、僕の時はすごいパートナーの人からも言われて。「コンサルタントっていうのは、1人の人間としてクライアントに認められるかどうかが1人前かどうかの差分だ。だからもちろんチームプレイなんだけども、自分自身がとにかく強くならなければいけないし」っていう考え方をすごい教えてもらったんですよ。なので、「グローバルに聞く以前に、自分として何ができますか、僕はこう思います」っていうのをすごい(求められる)感じだったので。デロイトは個人としての強さをすごい育ててくれる。
もちろんマッキンゼーも個人としての強さってすごい求められるんですけど、クライアントに出す時にはマッキンゼーとして本当にベストを尽くしたのかっていうところをすごい求められるっていう面で、僕はそこがアジャストしなければいけないんだなって感じてました。
Q:マッキンゼーはジュニア→マネージャー→AP→パートナーとレビューの階層がありますが、デロイトも同じですか?
福元さん:そこはやっぱ変わらないです。変わらないんですけど、ただそのレビューの軸っていうのが。
デロイトの場合は、そのパートナーっていう「個人として強くなった究極完全体」みたいなパートナーの方がいらっしゃって、そのパートナーとしてちゃんとした品質になってるかっていうのをレビューしてくれるんですよね。
マッキンゼーももちろん同じなんですけど、パートナーが「ちょっと僕じゃないかもね、このレビューするのは」って別のパートナーが出てきたりするじゃないですか。「AIのことだったら西海岸オフィスの彼の方がいいよね」って。そういうネットワークで発生したりするっていうのは、なかなかちょっとない経験だったかなって思ってますね。
■ マネージャーとAP(準パートナー)の「越えられない壁」
Q:マッキンゼーのマネージャーとAP(準パートナー)って何が違うんですか?
福元さん:ここは明確に大きな差があるなって僕自身思っていて。
マネージャーまでは基本的にはプロジェクトに100%入っているような形なので、「プロジェクトの中で自分の価値をいかに発揮できますか」っていう働き方になっていまして。
ここから準パートナー以上になると、いわゆる新しいプロジェクトを取ってくる……マッキンゼーは「営業」という言葉は絶対使わないんですけど、世の中一般的で分かりやすい言葉で言うと「営業」、マッキンゼー的に言うと「クライアント・デベロップメント」が入ってきます。
じゃあ何が違うんですかって言うと、プロジェクトに入ってる時は1個のスコープの中で仕事をするというのと、お客さんと濃密な時間をすごく過ごすので、お客さんや業界についてどんどん詳しくなるんですよね。
でも今度、クライアント・デベロップメントってなると、今まで僕自身はお会いしたことのない「新しいクライアントの役員の方」と話をしに行かなければいけない。シニアパートナーとパートナーと、準パートナーっていう形でチームを組んでいくんですよね。
シニアパートナーはクライアントのことすごく分かってるんですけど、準パートナーの僕の立場だと、初めてお会いするクライアントの方に対して「何かクライアントがこの時間過ごせて意味があったな、いいものもらったな」と思ってもらわなければいけないんで、すごく超短期間でクライアントのことをキャッチアップしなければいけない。
そして何よりも、自分は何かどこか尖ってないとダメなんですよね。
クライアントからすると「福元さんって僕会うの初めてですよね。うちの会社で福元君なんてプロジェクトやったわけじゃないですよね」っていう状態の中での役員級の方が相手なので。何か面白い発見あったよと言ってもらわないといけない。
それが僕の場合はAI領域だったので、「西海岸オフィスの人たちと議論しました」「イギリスのエンジニア・データサイエンティストと議論しました」「アメリカ・イギリスだとこういうことが今注目を集めてます」みたいなことを一生懸命キャッチアップして。それを日本の経営陣の方々にとって意味のある形でお伝えするにはどうしたらいいんだろう、っていうのをすごい考えなければいけないので。より「何か自分の武器を明確に持った状態」で、初めてのお客さんにとって意味のある話をしなければいけなくなるっていうところは、1個大きな違いだったかなっていう風に思います。
■ コンサルで得た最強の武器は「恐怖がなくなること」
Q:結論、コンサルに入ってよかったですか?
福元さん:コンサルは本当に選んで良かったなっていう風には思ってますね。
今結構「コンサル行くぐらいだったらスタートアップに行けばいいじゃん」みたいに主張されてる方とかもいるのは分かってるんですけど。
やっぱりコンサルに行ってよかったなって思うのは、基本的に「思考方法・ロジックが武器である」っていうのはどのコンサルティングファームも共通してると思うんですよ。物づくりしてるわけでもないし、個人としては何かプロダクトを作れるようになりましたみたいなところではないわけじゃないですか。
それなのにお客様からフィーをもらえる最大の武器は、やっぱりロジカルに考えられる、ロジカルにアウトプットできるっていうとこだと思うんですよね。そこを徹底的に鍛えられるっていう意味だと、どこに行ってもそれなりの力を発揮できる「ビジネスの基礎力」はつけてもらえたなと。
2つ目は、比較的短期間にいろんなクライアントのところに行くので、新しいことを始めることにすぐ慣れるんですよね。この会社のプロジェクトが終わったら次は銀行に行ってください、銀行が終わったら自動車会社さんやってくださいみたいになるんです。
これが最初から事業会社に入ったら、業界ごと変わっちゃうみたいな時に、一生懸命本を読んだりとか、それをよく知ってる先輩のところに物怖じせずに「教えてください」って行くとか、それこそマッキンゼーだったら「年下の後輩でもよく知ってるんだから教えてください」って頭を下げて助けを求めに行くとか……そういうのって結構事業会社だったら「年上の人の方がよく知ってて当たり前だよね」っていう形になってきて、なかなかそういう機会ってない気がするんですけど。
そういうのにすごい慣れてたので、転職が全然怖くなくなったし、起業しましたけど起業するって新しいプロジェクト行くのとそんなに変わんなくない?みたいな、そういう気持ちにもなれたので。
そういう新しいことにトライしやすいっていうのは、コンサルで身につけさせてもらったとこじゃないかなって思ってます。
■ 「20年に1度のチャンス」生成AIの波に乗り、起業を決意
Q:今は「ステラアイズ」を立ち上げられたと思うんですけど、なぜマッキンゼーを辞めて起業したんですか?
福元さん:なんで辞めたかって言うと、これまたマッキンゼーにネガティブな理由はないんですよね。
元々社会人1年目になった時に「いつかは起業する」っていうのは心に決めてました。
実際、父親もちっちゃい会社やってて、おじさんもちっちゃい会社やってて、おばさんの旦那さんも、母方のおじいちゃんも個人事業主で……周りに大企業で勤め人の人が本当に全くなかったんですよね。なので自分も会社やりたいなっていうのはずっと思ってて。
どっちかというとズルズル、IBMに行っちゃったし、デロイトにも行っちゃったし、マッキンゼーにも行っちゃったってなって。
早く自分の会社を立ち上げるっていうところに踏み切りたいなって思ったんですよね。で、そうなった時に、この一大AIブームが来た時にチャンスだとすごく思ったんですよ。
とあるパートナーが教えてくれてすごい大事にしてる言葉なんですけど、「福元君、シェアを取るってことは基本的にはできないんだ」と言われたんですよ。「いろんな会社が今ある市場の中でシェア争いしてるけど、シェアを取るってことはできないんだよ。」と。
「何言ってんだこいつ、そんなわけないだろ」「シェアってずっと変わってるじゃん。この人ちょっと働きすぎて頭おかしくなっちゃったのかな」って思ったんですけど(笑)。
彼が教えてくれたのは、シェアを取ってるように見えるけどそうじゃないんだと。新しいニーズがその市場の中で生まれてて、そのニーズを今誰も取ってない状態で、そのニーズを最初に満たした会社がその市場を埋めてってるんだと。
例えばビール会社がたくさんあって、規制が変わらなければシェアってほとんど変わらない。よっぽどの不祥事やサプライチェーン分断といったミスをしない限りは。
でも、「発泡酒」っていう新しい商品カテゴリーが生まれたってなると、これまでのビールとは味も価格帯も違う、別の新しいニーズが生まれてるじゃないですか。
その新しく生まれたニーズをいかにうまく捉えられるかの勝負でシェアがどんどん変わってるように見えてるだけで、1度埋まったニーズを奪い返すっていうことは基本的にはできないんだ、と教えてもらったんですよ。となった時に、このChatGPTがバーッて出てきて、「生成AI」です。従来型の機械学習のAIとかも使って企業って変わんなきゃいけないっていう、とんでもない新しいニーズが生まれてる瞬間だと今思うんですよね。で、このニーズを完璧に満たしてる会社って今ないじゃないですか。ってことは取り放題なんですよね。
ずっと起業したいなって思ってた中で、こんな千載一遇のチャンス逃して、多分5年後とかになると、もうこの新しく生まれたニーズって大体どっかの会社がバーッて取っちゃってシェアが決まっちゃって。ここを取り返すのは相当相手がミスしない限り難しいはずなんですよ。
だったら今このチャンス逃したら、次こんな大チャンス来るのもしかしたら20年後かもしれないですよね。20年経ったら僕多分もう仕事したくないなって思ってるはずなんですよね。チャレンジしようっていう年齢じゃなくなってるので、今だなって思ったっていう、そんな感じですかね。
Q:今は「ステラアイズ」で具体的にどんなことをされているんですか?
福元さん:ステラアイズは爆速開発をするっていうのをキーワードにしてます。
僕1人で起業したわけではなくて、もう1人元マッキンゼーのソフトウェアエンジニアと一緒に起業してて。彼はもうスーパーエンジニアで、僕なんかと比べ物にならないぐらい技術力が高い人なんですけど。
普通プロダクト開発するって、このAI以前の世界だと、要件定義して、設計して、開発して、テストして……ってなると、どんなに早くても半年とか、普通にやってれば1年間かけてしっかり作るっていうのが普通のやり方なんですよね。
けど僕らの中で、「このAI時代、遅すぎると。それではもっと早くプロダクト開発できるだろう」っていう思いを飲みながら、「そうだよね」っていうのをすごい一致したんで。爆速開発をするんだと。日本のIT業界の開発をもっとスピードアップさせるような会社を作りたいよねっていうので立ち上げました。
実際クライアントの方から依頼を受けて、PoC(概念実証)だったりMVP(最小限のプロダクト)だったりっていうプロダクト開発をさせていただいて、すごい早いのだと2週間とかでも「これ使えますよ」っていうのを納品させていただく、みたいなこともやってる会社になってます。
まとめ
コンサル業界を代表するファームを渡り歩いた福元さんのキャリアから、以下の重要な示唆が得られます。
強烈な「アンラーン(学習棄却)」の重要性:
過去の成功体験やプライドにしがみつかず、新しい環境では「33歳でも22歳に頭を下げて教えを乞う」ほどの柔軟性と素直さが必要不可欠。
求められる役割(カルチャー)の適応:デロイトで求められた「個人の圧倒的な強さ」と、マッキンゼーで求められた「グローバルの知(ベストプラクティス)の活用」の違いに見るように、ファームごとに評価の軸は全く異なる。
マネージャーと準パートナーの壁:プロジェクトを回すだけでなく、「初対面の役員に短時間で価値を感じさせる(=自分だけの尖った武器を持つ)」ことがクライアント・デベロップメント(営業)において求められる。
コンサルで培う究極の武器:ロジカルシンキングに加え、「全く知らない領域・新しい環境に放り込まれても、臆せず素早く適応する力」こそが、起業すらも恐れなくなる最大の武器となる。
キャリアは一人で悩むほど、不安が増幅するものです。
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