【AI時代のコンサルファームの選び方(2/4)】 AIはコンサルの仕事をどう変えるか—DD・資料作成・自律型AIの実例と「人が残る領域」—
はじめに
数日かかっていた作業が1時間に。手作業が20分の1に。コンサルの現場では、AIによる業務変革がすでに数字となって現れています。本記事では、私たちが支援の現場で見てきた具体事例をもとに、AIが何を変え、それでも人が担い続ける領域はどこかを整理します。
※記載の社名・数値・各社の状況は執筆時点の情報・見解に基づくものであり、最新の状況とは異なる場合があります。
AIが力を発揮する3つの領域
AIが特に力を発揮するのは、次の3領域です。
① 業務効率化・コスト削減——最も効果が見えやすい領域
生成AIアシスタントの導入をはじめ、効果が最も見えやすい領域で、議事録やリサーチなど定型作業の圧縮から着手するファームが大半です。効果は数字にも表れており、大手製造業では全社員約1.2万人への展開で年間44.8万時間の業務時間を削減、製薬業では複数名で1週間かかっていた需要予測が数時間に短縮されました。投資対効果が定量化しやすいため、ファームにとって「最初に提案しやすく、案件数も最も多い」入り口の領域です。
② 新規事業創出・R&D——意外にもAIと相性が良い領域
意外に思われがちですが、AIと非常に相性が良い領域です。新規事業の初期フェーズは「大量の情報を読み込み、仮説を数多く出し、筋の良いものに絞り込む」作業の繰り返しで、疲れを知らず仮説を量産できるAIの特性と構造的に重なります。実際、製薬業ではAI創薬企業と総額10億ドル規模の提携が結ばれて前臨床研究の期間短縮が進むほか、メガバンク3行合計1,600億円規模のAI関連投資が表明されるなど活用は業界横断で加速中。ゼロからの構想と検証に伴走するこの領域は、ファームの新たな主戦場になりつつあります。
③ 自律型AI(AIエージェント)——これからの本命
従来の生成AIが「質問→回答」の1往復だったのに対し、自律型AI(AIエージェント)はゴールを与えれば自ら計画を立て、情報収集から分析、資料のドラフト作成までを連続で実行します。Claudeの台頭を背景に、市場規模は2025年の約75億ドルから2034年には約2,000億ドルへと26倍超の成長が予測される、まさに「本命」の領域です。
実装はすでに始まっています。国内のメガバンクでは提案書作成の情報収集からドラフト生成までを自動化するマルチAIエージェントが本格稼働し、海外の大手銀行では450以上のAIユースケースが本番運用中。「複数のエージェントを束ねて成果を出す」働き方への移行が、すでに始まっているのです。
大手ファームのAI成果事例
先頭を走るファームの成果は、各社が公表している事例にも表れています。たとえばアクセンチュアのサイバーセキュリティ特化AIでは、従来5日ほどかかっていた作業が約1時間に短縮され、カバレッジ(対応範囲)も約80%へと高まったとされます。PwCでは手作業を最低95%程度削減し、従来の感覚からすると20分の1ほどにまで圧縮された例もあるといいます。
デューデリジェンス(DD)はこう変わった
さらに一例をあげると、DD(企業買収前に企業価値などを精査する作業)における効率化です。2024年ごろまで、DDはほぼ100%が人手で行われていました。多くの工程をExcelなどで手作業し、AIが入る余地はほとんどなかったのです。それが今では、簡易的なDDをAIで行うツールをファームが自前で用意し、おおよそ従来の1割程度の時間でAIが対応できるようになってきています。この割合は今後さらに増えていくと見られます。
議事録・資料作成の自動化と、その限界
議事録作成、情報のリサーチと整理——こうした作業もAIの得意分野です。提案資料程度であればAIである程度作れます。ただし、コンサルティングレポートのような複雑で深い資料の自動化は依然ハードルが高い。構成や軸の切り方、表現形式まで細かく指定するのは難しく、現状はPowerPointのショートカットを駆使して人が作ったほうが、結果的に早く質も高い——というのが現場の共通見解です。
それでも「人が残る領域」
では、いずれ100%がAIに置き換わるのか。そうはなりません。最も分かりやすいのがドメイン知識です。コンフィデンシャルな情報、言語化されていない情報、産業全体への深い理解——AIには目も手も耳もないため、そもそもAIが取り込めない情報が数多くあります。こうしたものを持つコンサルタントが、引き続きDDや戦略策定を担っていきます。
そしてもう一つが、AIのアウトプットを評価する力です。AIは答えを出してくれますが、それが正しいかをレビューするのは人間です。レビュアーの戦略的思考力が伴わなければ、AIの出力を鵜呑みにし、誤った判断につながりかねません。だからこそ「AIが出したものを批判的に検討し、より高い付加価値を生み出す」力が、これからのコンサルタントの価値になります。
コンサルそのものをAIに置き換える挑戦も
コンサルワーク自体をAIで代替しようという試みも、グロービングなどの複数社で始まっています。例えば、グロービングは「人員数に依らない成長」を掲げ、ノウハウをコンサルタント個人から切り離してAIで提供するモデルを公言しています。とはいえ、成功するかは各社のケイパビリティ次第。一通りの企業がAIを導入し終えても、その時々で最も需要のある領域——フィジカルAIやセキュリティのガードレールなど——をファームのパートナーが嗅ぎつけて提案していきます。だからこそ「全企業がAIを導入したらコンサルは不要になる」とはならず、変化のたびに次のテーマが生まれていきます。
まとめ
AIによるコンサル業務の変革は、すでに数字となって現れています。AIが力を発揮するのは「業務効率化」「新規事業創出・R&D」「自律型AI」の3領域。DDは従来の1割程度の時間で回り始め、議事録や提案資料もAIが下支えする一方、複雑なコンサルティングレポートの自動化はまだ人に分があります。
それでも、AIが取り込めないドメイン知識と、AIのアウトプットを批判的に評価する戦略的思考力は人に残ります。「AIを使い倒しながら、その出力を超える付加価値を出せるか」——これが、AI時代のコンサルタントの価値であり、ファーム選びでも見るべきポイントになります。
<次回>
「【AI時代のコンサルファームの選び方(3/4)】各ファームのAI活用はどこまで進んでいるか(仮)」
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